冒頭、運転手・梶田の死の原因は『自転車との接触』。
梶田は転倒し、歩道に頭をぶつけて死亡。
そして、自転車は逃走してしまった。
轢き逃げ事件。
この逃げた犯人に「父は人間であった事を訴える」決意をした梶田の娘たちとの出会いから、話は展開を始め、梶田の一生をなぞる杉村は意外な展開に戸惑い、小さく苛み、ラストへ。
最初の事故に関する記述の最後にこのような記載がある。
『それでも、自転車で道を走っていて人を殺してしまう事が容易に起こり得る社会では、善良で平凡であり続ける事も、実はたいへんな偉業であるかもしれない。』
被害者にならない為の努力と同様に、加害者にならない努力をしなくてはならない社会。そのようにとれる。
加害者にならない為の努力を続けなければ、『善良で平凡でありつづけ』られない。
これは、自転車ならずとも、車でも、歩行者でも同じ事。
正直、小説の事故死の原因が『自転車にはねられた』というのは初だった。
ここ数年、自転車は大ブームであるが、その事故数もうなぎ上りに増えている。
そういう小さな世相を切り取って丁寧に話を紡ぎ上げる『宮部みゆき』にうなる。
自転車の出番は、事故の事だけ。
話は淡々と進む印象ですが、丹念に練り上げた人間の『悪意』に考えさせられるお話です。
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