動画:『【How-to】高さ40cmの[凸]を乗り越える』の解説(とても長い)

 いわゆる『丸太越えテクニック』の動画をアップしました。
 こちらで報告するのが遅れてしまってすみません。
 解説などを書いてるうちに遅くなってしまいました。

◇ 目次 INDEX
 ・00:00~ [基本形][発展形]の紹介
 ・00:28~ [基本形]の説明
 ・02:30~ 動作とリズムを平地で覚える
 ・03:40~ うまくできない時の例
 ・05:50~ [発展形] の説明
 ・09:06~ サドルが高い時のコツ

 動画の下の文章説明の表示時間をこれまでよりも長めに設定したため、全体の長さが長くなっています。
 一度通して見ていただいた後は、上の『目次』を利用していただければストレスも少ないかな、と。

 後、予め身につけておくとスムーズなハウツーやドリルをまとめて再生リストにしたので、こちらもご参考にしてくださいませ。↓↓

YouTubeのサイトで見ると、リストが表示されます。
リスト全部→[ 凸の乗り越え ]に役立つテクニックいろいろ
個別 ↓
・【 How to 】シンプルホップと連続ホップ(ホッピング)
・【 MTBドリル 】ラインホップ
・【 How to 】はじめの “こぎあげ”
・【 How to 】”ホップからのノーズタップ (ジャックナイフ)”

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[基本形]は、「前タイヤを凸に乗せる」→「前タイヤ地面+後ろタイヤ凸の上」。
[発展形]は、「前タイヤを凸に置く→凸の上に後ろタイヤを乗せ、前を浮かしたまま通過する」。
 実際に山道などでも使うことを考えて、「サドルが高い時のコツ」も入れ込んでみました。

 [基本形]がスムーズにできるようになったら、[発展形」はお好みで取り組んでもらえればいいかな、と思います。
 実際には、[基本形]を速いスピードでこなそうと思うと、どうしても[発展形]が必要になるし、勝手にそのような形になるといった感じですが、やはりコツは存在するのでくっつけてあるわけです。

 これらのテクニックの感覚をしっかりと身につけられれば、シクロクロスのバイクで『シケイン』を越えることもできる。。。はず。
 シケインに強度があれば、だけど。←レースで壊したら怒られるんだろうか。。。
※ 『シケイン』はシクロクロス競技に設置される高さ40cm程の壁。たいてい木製で自転車を降り担いで越えることが多い。

 ちなみに、トライアルでは、「前タイヤをカドまたは壁面に当ててその反動で段差に登る(上に跳ぶ)」というスキルがありますが、それとはちょっと違うスキル。
 今回紹介したものの方が基本で、落ち着いて取り組め、また障害物がしっかり固定されてなくても可能なところが利点ですね。
 最終的にはどっちもできて使い分けられると良いと思います。

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 [基本形][発展形]ともに実際の動作自体に複雑なところはなく、前上げやホッピング動作ができている方ならばあとはタイミングとリズムの取り方などのいくつかのポイントを押さえるだけです。

 まったくはじめてだ!という方は「02:30~ 動作とリズムを平地で覚える」から挑戦してみてくださいね↓

↑ 当該部分から始まります
(実は最初こっちをやろうとしたけどなんだか調子に乗って今回の動画になりました)

 今回の動画くらいの高さで行う時のポイントは、

・前タイヤを凸に置く時「”上”から顔で押さえる」
・押さえを支えに「前に跳ねる」
・常にライダー自身が『前に進む』意識

 全部、動画内でくどくどと出てきますが、それだけ大切だよってことです。

 で、ここから下には、長々しいくどい解説が続きますので、動画で物足りなかったりおヒマな方はどうぞ。
 ちなみに読まなくてもこのテクニックを身につけるのになんら問題はございません。

◇ 上から顔で押さえる

 [基本形][発展形]ともに、テクニックの前半は「前タイヤをあげる」→「前タイヤを置く」→「跳ねる」の順に行われます。

 進んでいる自転車の「前タイヤをあげる」時、進行方向に対して後ろ向きの力を作りハンドルに伝える必要があります。

↑ この場合は、上半身(アタマ)を起こすように動作をイメージして行っています。

 今回は、すぐに「押さえ」→「跳ねる」必要があるため、前上げの動作を大きくすると間に合わなくなりますね。
 ですから、イメージとしては、上げる前に上半身を低くした後、頭から「真上」に伸び上がるようにしています。
 すると、結果的に上半身の起き上がりによって肩でハンドルを引くことができ、腰の位置はあまり退がることなく前タイヤが上がります。
 これによってカラダの前後の移動が少ないコンパクトな動作をしています。

 前タイヤを引き上げる時のカラダの動きについては、引き上げた後の目的(上げたまま維持・すぐに下ろす・跳ねるなど)によっていろいろと変わりますが、今回は維持が必要なくすぐに下ろすのでこの方法を使用しています。

 前タイヤが上がると自転車の角度も変わるので、自転車に対する腰の位置は動いていなくても結果的に後ろに移動した形になります。
 この前タイヤを上げる時に腰まで一緒に伸び上がってしまうと、そのあと「跳ねる」ことができなくなるので注意。

 ところで「上に跳ねる」ためには「下に押す」力(またはその力を支える外部の点)が必要ですよね。

 このテクニックで跳ねる瞬間では、前タイヤは[凸]の上、後ろタイヤは地面に接しているので、それぞれに「下に押す」力を伝える必要があります。

 ですが、カラダが後ろに位置したまま下に押そうとしても、後ろタイヤにはたくさん伝わりますが、前タイヤにはあまり下に押す力が伝わりません。

 

 上の写真を見ると、前後の車軸の中央あたりにハンドルもBB(両ペダルの中心)もありますね。
 ですから、それら操作部を上から押さえれば、そのままタイヤの接地点に”だいたい”均等に伝えることになります。(バイクの角度によりますし、正確に均等であることが絶対正しいわけでもありません)

 ですが、カラダは前タイヤを上げたあとなので、どうしても後ろ気味にいます。

 ですから、「顔で上から押さえる」、つまり体の一部を前に移動させることで、前タイヤへの力を増やすわけです。

 もう一点理由があります。
 この後「前に跳ねる」わけですが、前タイヤを上げる動作によってバイクの後ろに位置したカラダが「前タイヤを上から押さえる」動作をすることで前へ移動することになります。
 この「押さえる」時の前への移動が、そのあとの「前に跳ねる」の助走となり、より強く前に跳ねる力を得ることができる、ということになります。

◇ “前に”跳ねる

 「前に跳ねる」も、頻繁に出てくるワードですね。

 「前に」と強調していますが、まっすぐ水平にまっすぐ移動するわけではありません。

 実際には斜め上に跳び、着地点までは角度を変えながら「山なり」に跳ねることになります。
 「跳ぶ」と書くより「跳ねる」と書いた方が「山なり」なイメージになるかなと思ってこういう表現にしたんですが、、、ニュアンスが伝わるでしょうか。。

 この跳ねる時、前へ直線的に跳ぶのでは後ろタイヤが高い位置へと移動できません。カラダ(腰)が低いままで後ろタイヤが上がるのを邪魔するからです。
 また、前タイヤの乗った状態から真上に跳ねても、バイクに対してカラダが遅れるので、カラダが頂点を越えられずひっかかってしまいます。

 また、着地では前タイヤは低い位置に移動するため、あまり高く跳ねるのもあまり良くないということになります。

 ということで→『03:40~ うまくできない時の例』 をご覧くださいませ。

 こうした「跳ねる」動作に不慣れな時には、「カラダより先にバイクを動かそう」とすることがあります。

 自転車とライダーでは、ライダーの方が「重い」ために、それでも一応バイクは動くのですが、ライダーの胴体(&重心)位置があまり変わらないままなため、手足の長さ以上の変化をバイクに起こすことはできません。
 実際には、カラダの方もバイクを動かそうとする反対向きの力を受ける(作用反作用の法則)ので、バイクの変化はさらに小さくなります。

 [基本形]では、跳ねた後に前タイヤを低い位置に移動しますが、これもカラダが上下に動かなければ手の長さだけでは到底足りません。
 特に腕の付け根=肩関節周りはバイクを先回りして低く移動させる必要があります。

 サドルが低ければ、アタマから腰にかけて一緒に低くすることができます。
 ですが、目標がある程度高い場合、それでは後ろタイヤにお尻がこすってしまう事もありますし、サドルが高い場合には腰を落とすことがまずできません。
 ですから、前タイヤの低い着地に備えるためには、足の付け根でカラダを折り、アタマから降りていくようにして肩を低くして着地するようにします。

↑ 腰の上下の動く距離に対して頭の移動距離の方が大きいですね。背中の角度変化で追っていってもわかりやすいかと思います。

 この『脚の付け根でカラダを折る』は、他でもバイクを上から押さえたり、安定して走り抜ける時などに役に立つので、普段から「長座(足を前に伸ばして座る)」やストレッチなどで癖づけておくと良いと思いますよ。

◇ 常に前に進む・前に出る

 アクション中、ペダリングを止めても自転車が前(水平)に進むのは『慣性力』によって一定の速度で進もうとするからです。
 この『慣性力』による等速運動は、「自転車+ライダー」を合わせた質量の「合成重心」に対してのものになります。

 前後の地面に傾きがある場合はその影響は受けますし、また、後輪が段差を降りる時には、後輪が角を転がり落ちる時の加速もありますが、ここではちょっと置いておくことにします。
(タイヤがカドを通過し落下する際、重力によってタイヤの半径分前に進む力を生む)

 自転車が跳ねた時、自転車+ライダーが前に進むのも、基本的にはこの「慣性力」によるものです。

 この時、カラダの動作とバイクの水平の位置関係は、それぞれ作用反作用の法則にしたがって、カラダを後ろに退げればバイクが前に出て、カラダを前に出せばバイクは後ろに下がります。
 ですが、この動作をするバイクとカラダ(の合成重心)は、慣性力によって一定速度で進み続けている、という状態なわけです。

 上下に動いた分は、地面などの反力を得て跳ねることができるのですが、それによって水平方向の等速運動に影響は与えません。理論上ですけどね。実際には路面の抵抗やタイヤの凹みなどによって小さな変化は発生します。

 ということは、アクション中バイクとカラダはどのように跳ねても前に進むということです。タイヤが障害物に引っかからなければ。

 この状態の中で、例えば後ろタイヤを[凸]の頂点に届かせるためにバイクを前に思い切り突き出したとすると、カラダもその反作用で後ろに引くことになります。
 その状態になってから、バイクをコントロールする状態に戻るのは少し大変ですね。
 サドル高い場合では、サドルの後ろにお尻が落ちてしまってカラダを真ん中に戻せない例がありますが、サドルが低くても程度の差はあっても同じようなことは起きます。

 すると、すぐに次の動作に移れなかったり、そのままの状態でバランスを崩した場合に立て直せなかったりするわけですよ。

 また、このような動作に慣れていない間は、一つ一つの動作が連続せず「この動作が終わったら次を考える」ような感じになることがあります。
 ですが、バイクは進んでいるので、だんだんと動作が遅れ、その遅れをどうにかするためにバイクを前に押し、といった連鎖が起きてしまいます。

 どっちもできれば避けたいですよね。

 で、一つの動作をする時には「次の動作」や「次の位置へ移動」の意識と準備をしながら動くようにイメージします。

 具体的には、「跳ねる」であれば「上から押さえる」動作をしたら「次の位置」にしっかり意識を向けておきます。
 「押さえ」の後の「跳ねる」は、それほど強く意識しなくてもできる動作です。
(そのためにも「押さえ」を一連の動作のアクセントとします)

 他にも、基本的には動作の要は「下に押す」で、跳ねる方は「押した力を解放する」といった感じですると良いと思います。

◇ [発展形]について

 [ 発展形 ]は、トライアルの「突き出し」や「ウイナンド(呼び方が古い・今なんて呼ぶの?)」に似ているようですが、ブレーキをせずそのまま後ろタイヤを走らせて越えるところはちょっと違いますね。
 ブレーキで止まることに慣れたトライアル系の方はちょっと怖いかもしれません。

 コツは、跳ねる時に「前タイヤを持ち上げない」&「前タイヤを置いた時の角度のまま跳ねる」ということです。
 もし、もっと低い高さで練習する時も同様ですが、低くなると後ろタイヤがカドから離れるのと最初の前タイヤが低い分、さらに『前に跳ねる』『前を上げる』ことを意識します。

 [発展形]は、障害を早く確実に通過する時にはとても役に立つテクニックです。
 跳ねたあと前タイヤから下ろす[基本形]では、路面によっては前タイヤがつんのめる可能性があります。
 その点[発展形]では、基本的に両輪で着地をするため、路面の影響をうけにくい。
 また、ある程度の速度があった場合、後ろタイヤが頂点を飛び越してしまっても、カラダが前のめりになっていないのであまり影響がありません。
 個人的にはいっそ跳び越えてしまえ!くらいに思いながら跳ねてます。

 難しい点は、後ろタイヤが頂点に乗る時の対する感覚です。
 あまり「後ろタイヤを乗せる」と強く意識すると、前タイヤ(ハンドル)をカラダに引き付けるような動作になったりします。←けっこう危ない。
 いわゆるストリートの”タップ”などとも違いますしね。。。

 後ろタイヤの乗ってからは、「乗る→降りる」の連続した現象を「一つの動き」としてイメージすると良いかなと思うのですが、正直これは「慣れ」に頼る部分でもあります。

 最初は、前が落ちても良いようにしっかり前に跳ねながら、後ろタイヤの位置の感覚と「凸に乗って転がり落ちる」までのタイミングを覚えていくと良いと思います。

◇ サドルが高い時のコツ

 『09:06~サドルが高い時のコツ』は、実際に山道で使う想定で入れました。
 近年装着率の上がった「如意棒(高さ可変シートポスト)」の利点は重々承知しているのですが、できるに越したことはないかな、と。

 あと、シクロクロスのレースでのシケイン越えなども想定に入れてます。
 ドロップハンドルでも十分にできるテクニックですから。

 内容はサドルによって邪魔される『カラダの上下動』をどうやって行うか、ということですね。

 腰が低くできる場合は、カラダ全体を大きく沈め→伸びあがれば跳べます。
 「跳ぶ」というのは、その物体(カラダ)の重心の上下の運動によって重力を振り切るということですから、腰が落ちない場合でも同じように重心の上下の移動を作れば良いわけですよ。
 そこで「下半身が動かないなら上半身を倍動かせばいいじゃない」という発想?になるわけです。

 サドルが下がる状態でも、これができた方が最初の腰の位置が高いので、あまり大きく跳ねる必要がなくて便利かな、と思います。

 自転車の上での動作がなじまない時には、一旦バイクから降りて、何度かカラダだけでやってみると良いかな、と思います。

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 以下、あとがき

 その昔は「マウンテンバイクの基礎テクニック」の一つであり、このくらいの高さをこなせるライダーは結構いたように思いますが、マウンテンバイクで走るところが整備され「こんなところに倒木が!?」みたいなシチュエーションが激減したためか、忘れられつつあるように感じています。

 トライアルでは、コース(セクション)内で、なんとなく使ってるくらいのテクニックかな。

 平地での練習をした後は、チェーンリングの当たらない高さで練習してみるといいかな、と思います。
 また、[凸]ではなく「段差のぼり」を同じ動作で行うのも安全に練習できます。

 ほんとは、もっと感覚的な感じでハウツーを作ろうと思ったのだけど、作ってるうちにどんどんくどくなってしまってちょっと反省しています。

 実際に行うことはなくても、何かのお役に立てれば嬉しく思います。

 ではでは。