考える:起伏(こぶ)を越える時の前提を考える(2021.4.10)

 一年くらい前にInstagramにアップした「段差とスロープを使ってペダリングせずにチカラ尽きるまで段差に登る動画」を、再編集して改めてYouTubeにアップしました。

 この動画の中でやってることは、ダートコースなどの起伏(こぶ)を越える時の「考え方」と似ているなって思って、説明の参考になるかなって。

 ただ、これはどこまでも「考え方」の話で、実際の動作では「段差のぼり」と「こぶを越える」ではだいぶ違う。←超大切
(段差のぼりの動作で起伏を走るとどんどん身体が遅れます)

 あと、起伏(こぶ)の時には「跳び上がる」はできなくても構わないですよ。

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 以下、何もしなくてもこぶを通過できる程度の速度で走ってる前提で話を進めます。

 この時、自転車は勢い(慣性)によって、水平方向に同じ速度で進もうとします。
 こぶを越えて水平に戻った時、同じ速度なら御の字。
 少しでも速度が増えていたら嬉しいですし、水平に移動した時と比べてその到達時間が短くなればさらに嬉しいということになります。

 こぶを自転車で通過する時は、上り面でどうしたって減速します。

 もしその「上り面」が動画のような「段差」だとぶつかって止まっちゃいますよね。

 たとえそれが緩やかな上り坂であっても、上りになっている(高い場所に移動する)以上、走るほどに減速していくことは間違いありません。

 また、進入速度がとても速い場合などは、自転車はこぶの上り面によって上に持ち上げられる(上向きの力を得る)ので、それによってこぶの下り面に差し掛かる時には地面から浮いたりして(ひどい時には跳ね上げられて)しまいます。
 腕や脚の曲げ伸ばしで対処しようにも、その曲げ伸ばしの長さや動作速度には限界がありますからね。

 

 そこで、こぶの手前の「(下の)地面」を踏んで跳び上がり、こぶの頂点を越えて着地できれば「上り」という減速区間の影響を受けなくて済む理屈。
 (上が平らなテーブル上であれば上面に上から着地するように)


 今回の動画での「段差のぼり」も同じ「意味」です。
 「段差」という超減速区間?を飛び越えて「ないこと」にしてしまってるわけです。

 実際にダートを走る時には、跳ぶまでしなくても「(頂点を越えるまでの時間)上向きの力を手前の地面によって作る」ことができれば上り坂による影響を十分に減らすことができます。

 下り面は、上の動画の通り、放っておいても速度を増してくれます。
 重力が引っ張ってくれますからね。

 まあ動画では、登ったところが「平面」なのとちょっと後輪を過度に引っ掛けてしまって減速してるので、スムーズさに欠けてますが。。。

 実際にダートの起伏を越える時は、後ろタイヤがこぶの頂点に引っかからないように「前から滑り込むように」という感じ。

 または、下り面に「上から身体を落とす」イメージで動くとうまく頂点を抜けてスムーズに下りに入りやすくなります。

 この「滑り込む」時の実際の動作の参考はこっちの動画で(最後の「おまけ」の部分)

 ということで、ここまで説明したように上りと下りでそれぞれの動作をすると「上り面では減速がなくなり、下り面では速度が増すので、結果として速くなる」ということになります。
 ついでに「跳ねあげられにくくなる」というおまけ付き。

 以上が、僕のこぶ(起伏)を越える動作の「前提」としているものです。

 いわゆる「プッシュ」は、この上に追加して行う動作によって加速するものと考えています。
(身体を下り面に落とすことで、増速度を増やす動作)

 僕のダートやパンプのレッスンでは必ず最初のあたりに実施することですから、聞いたことのある人もいるかもしれませんが、改めて図と文章で説明するとこんな感じ。

 動画ではこんな感じになります。(また古い動画ですが)

 一応書いておくと、これは「ジャンプ」とはまた違うものです。
 ジャンプは上り面を利用して飛ぶものですから、上り面をキャンセルしては跳ぶことができません。

 でも、その前にこうした「上下の動作」に慣れておくと、ジャンプも飛びやすくなりますし、もし直前で飛ばない選択をした時にも対処しやすくなると思いますよ。

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 ちょっと蛇足。

 この前提となる自転車が進む力は「勢い(慣性)」によるものだと上でも触れました。
 これは、もしこぶがなく水平の地面であれば、ずっと同じ速度で進もうとします。

 この水平の状態で、自転車を進行方向に対して前や後ろに押したり引いたりしても、それによって”結果的に”加速するなどの現象は起きません。
(瞬間的に一部が前に出たりしますが、姿勢を戻すと戻ります。「移動する物体」としての速度は増しません・※作用反作用の法則)

 そしてそれは斜面上でも同様です。押しても引いても自転車の速度は斜面による加速以上には速くならないのです。

 それを雑に実験した時の記事がこちら


 つまり、自転車(この場合は自転車+ライダーを合成した物体として考える)は、外部からの力、もしくは機構(ペダリングやブレーキなど)によって影響を及ぼさない限り、速さが増減することはありません。
 斜面では、相互の力と関係のない「重力の働き」によって速度を増しているわけですしね。

 細かく言えば各種抵抗によって速度を減じていくのですが、自転車に二つもついてる車輪はもっとも大きな抵抗となる地面の摩擦抵抗を(その回転方向にだけ)極端に減らすことができるという人類史上最高の発明品(※ 個人の感想です)なので、自転車の動作を考える時にはあまり考慮しなくて良いのが助かってます。

 跳び上がる(伸び上がる)という動作単体は、自転車に対してではなく「地面の支え(床反力)」による(重力方向での)上下の動きです。

 ですから、自転車の進行方向(前後)に対しては影響を与えませんし、与えようとしてもできません。(条件:地面の角度が一定の場合)
 でも、地面という外部によってその力の一端を支えられて、上下方向に加速をし跳ぶことができるわけです。

 そうして伸びあがることによって「高さ」を得て、その「高さの持つ力=位置エネルギー」を下り坂によって「進む力」に変換し速度を増すことができるということを示せるなって思ったのでこの動画をアップしたわけです。

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 これは、動作が大きいので、こぶが連続した場合などにはその動きを工夫する必要があります。
 無駄に高く飛ばないようにしたり、動きをコンパクトにしたり、下り斜面で身体を低くして次のこぶに対してすぐ伸びる動作をできるようにしたり、といったことです。
 さらに間に合わないくらいにこぶの間が狭く連続する場合には、動きをより小さくしたり、さらに忙しくなれば腕や足の曲げ伸ばしによって対処することもありますが、その程度によっては違う考え方・捉え方になります。

 なので、上のことは「一つのコブを越える時」もしくは「忙しくない連続したこぶを越えて行く時」という前提があります。
 まあたいていのところはこれでこなせると思いますが。

 ちなみに連続するこぶの間隔などによっては、下り斜面から次のこぶに向けて伸びあがる動作が意図せずいわゆる後輪の「プッシュ」動作となり、さらに加速することがあって気持ちいいです。 

 プッシュ動作については、また良い説明が思いついた時に改めて。

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 今日のところはこんなところで。

 またそのうちに。