考える:「重心を探ってみた」&「重心と自転車上の動作について」(2022.6.17 記)

 先日、またちょっと毛色の違う動画をアップしました。
 自転車をぶら下げて「重心」を探ってみたって内容です。

 よく「重心」って言葉を見かけますし僕も使うのですが、実際にその位置を確かめたりはしてなくって、かなりざっくりではあるんだけど確認!みたいな。

 ずっと以前に書いた理屈ブログの記事での図の位置(推測位置)とも前後はあんまりズレがなくてちょっとホッとしました。思ってたよりも低かったけど。
 もちろん自転車によってその位置は違うんですけどね
 そのあたりはその以前の記事に書いてあります。↓

 上の記事にもあるように、自転車の走行について考えるには、この「自転車単体の重心」と「ライダーの重心」、そしてそれらを合わせた「合成重心」などをそれぞれの実際の「重さ」や「姿勢の変化(による重心位置の変化含む)」などを含めて考えることになります。

 物体とは立体、つまり「縦・横・高さ」の寸法を持っているので、自転車を真横から見た場合、「上下方向(高さ)」「前後方向(横)」「幅(奥行き)」の三つの軸からその位置(座標)を示します。
 さらに言えば「重心」は本来かなり厳密な「点」です。
 そうして考えると、動画の重心は「奥行き」については完全無視ですので随分とざっくりしていることがわかります。マスキングテープの重さによる重量変化も無視してますし。
 まあそれでも参考程度にはなるのかな、と。

 ちなみにその重心を通る「軸」を中心としてその物体を回転させると、どの位置でも安定して制止することができますし、仮に高速で回転させたとしてもそれによって振動が起きることもありません。

 自動車のホィールの端にオモリをくっつけて「バランスをとる」ことがありますが、それもオモリをくっつけることで重さの分布バランスを調整し、重心位置をその回転の中心に寄せて回転時に生まれる振動を軽減させようというものですね。

 

 重心は、物体の中にあるとは限らず、動画でもフレームのないところをその位置が示されています。

 ですから、重心はあくまで実体ではなく「物体に分布する重さの中心」という考え方をします。

 物体に力を加えて動かす時に、この「重心」に対してまっすぐ力を加えるとまっすぐ移動しますが、現実にはなかなかそんなまっすぐに力を加えられるものではありません。

 まっすぐに力を加えられない時、またはそれでは不安定になる時、そもそも重心が物体の中にない時には、複数の点に力を加えて、その「合力」によって重心を動かしたい方向に向くように考えます。
 これは複数の接点によって操作する自転車でも同じことです。

 

 例えば、ホッピングでは身体を上に素早く移動する(跳ねる)ことで「上向きの力」を作り、それを手や足でそれぞれグリップやペダルに分散して伝えます。

 「身体の重心」が上に移動したことで発生する上向きの力は、自転車との接点に分散して伝わりますが、そうして自転車に伝わった力はまた合成され「自転車の重心」に上向きに働く力となります。

 もっと簡単にいうと、「身体の重心」が真上に跳ねる→その力で「自転車の重心」を吊り上げる」という感じですね。

 こうすると「自転車の重心」と「身体の重心」という2点への力の発生と働きで、その動きをシンプルにイメージできます。

 この時、前タイヤばかりが浮くのであれば、「自転車の重心」に対して「身体の重心」が前にズレていることが考えられますのでちょっと後ろ目で上下をすることを考えたり、後ろばかりがあがるのであればその逆を考えたりします。

 実際には、ペダルが足から外れてしまったり、うまく力を伝えられず自転車が浮かないなんてことも起きるのですけどね。

 そうした場合は、腕や脚などの動作を見ながら、そもそも動作が小さくなっていないか(重心の移動が不十分)とか、上下する上半身の角度に大きな変化が生じていないか、手とハンドル、足とペダルの接点で力が十分に伝わらない何かがあるのではないか?などを考えます。

 実際での力の伝達は、重心から直接に伝わるわけではありません。
 身体や自転車の構造物を介して伝わりますから、それまで考えるとそれほどシンプルなわけでもありません。

 こうしたことも踏まえて考えることには、ちょっと慣れが必要かもしれません。
 でも、1人でテクニックを覚えていく時にもとても有用だと思いますし、教える側に立つ人には必要なスキルであると僕は考えています。

 

 ただまあホッピングで跳ぶ時にいちいち「重心」を考えてる人はそんなにいないとは思うんですよね。少なくとも僕は考えてませんし。
 人間は、なんらかの目的に向けて見当をつけて動作をすることができますし、その動作に不具合があっても感覚や経験をもとにその動作を細かく修正することができます。

 ですが、様々な考え方を知ってるとより明確なイメージができますし、なんらかの変化をつけたい時や、自分ではない誰かの動きを見た時にどうしてそれができるのか、できないのかを考えたりイメージするのにも便利です。
 僕にとってそれは、自分の身体の特徴や動作感覚とは違う誰かに教えたりする時にもとても役に立っていると考えています。

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 「重心」から考えることを「実際のライディング」に落とし込むには、もうちょっと細かいところまで丁寧に考える必要があります。

 ですが、すでに書いたように、人間は動作をし、その結果に対して細かく修正をして最適な動作に近づけることができます。
 つい最近まで、スポーツの動作の最適化はそうしたことの繰り返しによって練られてきたものですね。

 ですから、一から全部を考えなくても、いろんな考え方を知っているだけで「修正」の時に役に立つと思います。
 そうして得てきた経験と知見は非常に貴重ですし、またそれを伝えることは誰かの役に立つものだと思っています。

 僕の場合は「考えて動いて確かめる」ことが好きなのと、自分で考えたことがあんまり間違ってるとレッスンなどで申し訳ないな、と思ったことがきっかけでこうして考えるようになりました。

 いつの間にか、そうして考えること自体が楽しくなっていますが、これも一つの自転車の楽しみだと思います。

 この楽しみを共有できる方がいたら嬉しいです。

 それでは、また。