動画:『チクタク〜ノーペダリングでぐねぐね進む』の解説

超長いです。下の方にステップごとに別けて掲載しています

『チクタク』のハウツー動画の解説を遅ればせながら。
『MTB日和 vol.40』に掲載されたのですが、もうちょっと詳細に伝えたい欲がこらえきれずこっちに書いた次第。
先に断っておきますが、動画も文章も超長いです。

『チクタク』は、ペダルをこがないで前タイヤを左右に振ったり、バイクを傾けた時に生じる力を利用したりして前に進むテクニック。

ちなみに、これが正式名称ってわけじゃなく、俗称みたいなもの。
BMXのフラットランドやストリートでは同様のテクニックが当たり前に使われてます。

ハンドルへの意識と入力(それぞれのグリップへの重さの伝え方)によるコントロールを覚えることができるってのも今回紹介した理由の一つですが、、、まあできれば楽しいじゃないか、くらいな感じで(笑)

正直、この解説読むより動画だけ見てとにかくやってみた方がいいんじゃないかって思ったり思わなかったり(笑)

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今回は、4つのステップで構成しました。
ある程度できるよって人も、『ステップ1』から順番にじっくり取り組んでもらえるといいかなぁと思います。

『ステップ』ごとに解説を書いていますので、参考にしてくださいね。

この解説では、それぞれのステップの開始点で始まる動画を貼り付けてあります。
動画を再生するとそれぞれのステップのところから始まります。
(ブラウザで『再読み込み🔄』をすると何度でも同じところから見ることができます。SNSなどから開いてる場合は再読み込みできないことがあるので、PC・スマートフォンのブラウザで見てみてください)

それぞれのステップの解説も、その動画の下にぶら下げておきますので参考にしてくださいね。


■ ステップ1 “ハンドルくねくね” [ 0:57~]

→YouTubeのサイトで見る

『ステップ1』では、まずハンドルを大きくクネクネさせると自転車が進むことを体験し覚えます。これはステアリングの構造によるもので、どんな自転車でもできます。

完全停止から始めるのは超絶難しいので微速前進くらいから動作『ハンドルクネクネ』をスタート。
スピードが出てからもおかまいなしに前輪真横まで向けるとハイサイド(進行方向に対して前タイヤ曲げすぎて吹っ飛ぶ)くらうので、要注意です。

ポイントは以下の通り。

  • とにかくハンドルを大きく動かすこと。
    → 特に最初は前輪が横に向くくらい大きく動かす。
    → リズムよく大きく動かすことで、簡単に進むことができます。
  • ハンドルを動かした時にフレームが傾くのを邪魔しない
    → ハンドルを動かした際にフレームが傾くのは、前に進むのに必要な要素なのでこれを邪魔しない。(何もしなければいいです)
    →あまり腰を落として踏ん張ると傾かなくなっちゃうので、足は突っ立ってるくらいでちょうどいいです。その代わり、足の付け根=股関節で身体を折って頭を前に出すことで前後のバランスを作ります。

意外とできないのが『ハンドルを大きく動かす』。
慣れないと半端な量だったり、逆に切り返すのが早すぎたり。

グリップを強く握りすぎていると動作自体が遅くなる&自転車の傾きを邪魔してしまいます。

『自転車の傾きを邪魔しない』=『自転車を身体の下で遊ばせる』ためには、腕以外を動かさないで『突っ立つ』感じで、腕だけを使ってハンドルを大きく動かすようにします。

またこの時、頭(肩)を大きく後ろに退いてしまうと、ハンドルを動かした時に身体(頭・肩関節)から前に移動したグリップに手が届かなくなっちゃいます。

同様に、『腰”だけ”』を落としたフォームでハンドルを後ろから『持って』乗っているケースがあり、この状態でもハンドルを大きく動かすことができません。

『ペダルの上に突っ立った』まま、足の付け根で身体を折り(お辞儀するみたいに)頭と肩関節を前の方へ移動し、どれだけハンドルを動かしても手が届くようにしておきます。

あまりハンドルに重さをかけないで、『突っ立って』身体中の力を抜いてるくらいでちょうど良いのです。(ステップ1の場合は)

ちなみにこの『ステップ1』だけタイヤがとても減るのでやりすぎに注意。


ステップ2 “曲げて曲げて進む” [ 1:50~]

→YouTubeのサイトで見る

『ステップ2』では、『ステップ1』の『ハンドルを大きく動かす』動作に加え、左右に大きく曲がることを意識し、進むことを身につけます。

『ステップ1』でハンドルくねくねさせて進むのは、ステアリング機構のj仕組みを利用したものでしたが、『ステップ2』では『バイクが傾く=倒れる時に生まれる横向きの力』と『それまで進んできた力』を合わせた方向に前タイヤを向けることで自転車が進むという仕組みです。

ポイントは

  • 曲がる方のグリップの『真上』に『顔を載せる(置く)』
    →ヒジなどは曲げる必要はなく、腕を伸ばしたまま、ただ顔を片側のグリップの上に移動させるだけです。
    → これにより自然にハンドル(とバイク)を傾けることになります。
    →『置く』『載せる』感覚がないうちに、曲がる側のグリップの近くに顔を持っていくと、『重さ(「ステップ」3では落ちる動作)』ではなく『腕力(腕の伸長動作)』でグリップを押し下げる癖がつきやすいです。
  • リラックスし、頭をグリップの上からグリップの上に移動させる
    → 上記のことから、できる限り体をリラックス。自転車だけを動かそうとせず、『体を動かした結果自転車が動く』感覚を大切に。
    → ただ、グリップの上に移動させるだけではなく、グリップに頭の重さを上から『載せる』感触を確かめる。
    →切り返す時には、まず自転車が”曲がった”ことを”確認”してから逆のグリップへ向けて動きます。この”確認”は、グリップに頭を載せる感覚によって行います。
  • 一回一回『ちゃんと曲がること』
    →『ステップ1』のようにハンドルだけ左右に動かしても身体はまっすぐ進んでしまいバイクの傾きは限定的=進む力になりません。大きく左右に曲がることで、バイクが傾いている時間が長くなります。
    →そのためには、顔・胸も曲がる方へ向けていきます。

    『ステップ1』の姿勢で”腰の位置”はそのまま、顔を左右のグリップの上に移動させながら曲がる方向に向ける感じです。

『自転車の傾き』だけを意識しすぎると身体よりも自転車を動かすような動作になりがちです。
他の動作でも同じなのですが、『自分の身体を動かす』→『結果的に自転車が動く』ということを忘れないようにしてください。


ステップ3 “上下の動きを使う” [ 3:45~]

→YouTubeサイトで見る

『ステップ3』では、『ステップ2』に、上下の動き(身体動作)の力を足して『より強い加速』を得ることを覚えます。

『ステップ2』の動きがぎこちないままにこの『ステップ3』を始めると、動作の意味がわからず混乱することがあるので注意です。

ポイントは、

  • グリップの真上から『頭を落とす』こと
    → 基本は『ステップ2』の動きのまま、グリップの上に頭が来たらそのままグリップめがけて『頭を落とす』感じです。
    → 腰はBBの上で突っ立ったままの前後位置です。
    (フレームやハンドルポジションによっては多少前後したり少し低く構える必要が出てきますが、腰の位置はそこから動かない)
  • 落とした頭をグリップ(手の甲)で『支えて止める→力が伝わる』
    → 頭を落とした時、その動作を落とした側のグリップ(手の甲)で支えるように受け止めることで、動作を力に変換します。ただ動いているだけでは動作の力は伝わりません。
    → 実際に手と頭がくっつくわけではありません。。。
  • 一回一回しっかり頭を”上げる(戻す)”
    → 片方のグリップに頭を落とし加速を得た後、確実に一旦頭を上げる(戻す)ことを忘れないように。『頭を落とす』ことがこの動作による力の源なので、戻らないと次の力が小さくなってしまいます。
    → 頭を上げる方向は、ハンドルの『真上』。
     倒れた背中が起き上がるように”後ろ”に上がると自転車は失速します。
    → 頭を上げず、横移動しながらグリップに頭を近づけてく動作になってしまうと、グリップを『真下』ではなく『斜め』に押す動作になり十分に力が伝わりません。
  • “曲がる”ことを忘れない
    → 焦らず、一回一回しっかり『曲がる』ことを忘れない

この『ステップ3』では、『足の付け根で身体を折り、ハンドルの上から手を置く』解説も入っています。
このフォームは、他のテクニックなどでも利用しますので、参考にしてください。


最終ステップ “身体をまっすぐ進める” [5:40~]

→YouTubeサイトで見る

『最終ステップ』では、『ステップ3』までの動作を使って『より速く』『身体がまっすぐ』進めるよう練習します。

そのためには、『ステップ3』の”頭を落とす”動作に加え、『頭を跳ね上げる』動作を使うようにし、ハンドルを支点に”頭(身体)を前に進める”感覚を必要とします。

  • ある程度のスピードが必要
    → ゆっくりの状態でこの動作をしようとしても、動作の力がうまく伝わらずギクシャクしてしまいます。
     『ステップ3』から徐々にスピードを上げながら移行するようにしましょう
  • 姿勢を低く
    → 『ステップ3』までよりも意識的に身体(頭・腰)を低く構えます。
  • 頭を落としたグリップ(手)を”支え”に頭を跳ね上げる
    → 『ステップ3』では『頭を落とす→力を伝える』でしたが、『最終ステップ』では『頭を落とす→グリップ(手)に”乗って”頭を跳ね上げる』ようにして力を伝えます。
    → 頭はただ『上げる』だけではなく『跳ね上げる』。それによって『より強い力』を『瞬間的』に伝えることができます。(このページの最下部に簡単な解説を書きました)
    → 『跳ね上げる』とありますが、実際にはその力によってグリップが下がるのと、瞬間で力が伝え終わるため、高くまで頭をあげる必要がありません。
  • より『前に』を意識する
    → 跳ね上がる動作も小さくなる分、より『頭から前に出る』つもりでしっかりグリップに乗って前に出ます。
  • スピードが上がったら動作も左右の振りも小さく
    → スピードが上がると、ハンドルの切り返すテンポも上がるので、一回一回頭を高くまで戻すと体の動作が間に合わなくなります。
    → 跳ね上げ動作での『力』は瞬間的に伝わるので動きが小さい。
     跳ね上げの動作は力の発生時間が短いので、頭を大きくあげる必要がありません。よって上下動も小さくなります。
    → グリップに力を伝えたら、その反力(反発)で『頭』を反対のグリップの『上』まで移動させ、小さい動きの中で確実に『落とし』→『跳ね』ます。
  • 交互に『前に出る』ハンドルグリップに頭を乗せていく
    → 短い時間で力を伝えることができれば、より早く次の動作に移れます。
    → ハンドルを左右に向けることで、交互にグリップエンドが前に出ます。
     その前に出たグリップに確実に頭を上から落とすように動くことで、自転車だけではなく身体ごと前に進むようになります。
  • 『アクセント』と『フォロースルー』
    → グリップ(手)に『力』を伝えその反動で頭を跳ねさせる動作を『アクセント』に、その後力の流れのままに手(グリップエンド)が後ろに流れて行くのを『フォロースルー』として、動作の流れの中にアクションを起こすポイントを作ります。
    → 動作を全て意識しながら行おうとすると緩慢な動きになりやすい。

いろいろ書きましたが実際には『ステップ3』までができていれば、問題なく移行できる動作です。。。焦らなければ。

動作は小さくても、アクセントになる動作でしっかり力を伝えてそれ以外は流す『フォロースルー』は、どんなテクニックでも必要な感覚。
動作を一つ一つ『なぞる』のではなく、『アクセント動作』に合わせてリズムよく『トン!トン!』と動きを繋いでいきましょう。


『最終ステップ』までを確実にできるようになれば、バンク内でのプッシュや、コーナーリングの入口と出口で自由にラインを選べるようになります。

あ、あと、スプリントで前タイヤが左右に振れる現象は、このテクニックと関連ありません(たまに聞かれるので)。アレは原理的に別のものになります。

個人的には、新しい『基礎テクニック』にラインアップしたいこの『チクタク』。
どこでも練習できますので、ぜひチャレンジしてみてくださいね。

【『跳ねる』動作によって『大きな力を瞬間的に伝える』】
 人間が外部に向かって力を伝える=『押す』時、『押す』対象の抵抗によって同等の『押し返される』力が発生します。これを『作用・反作用の法則』と言います。
 腕や足を伸ばして力を伝えようとしても、対象があまりに重たい場合は動かないだけではなく『押している人間』の方が動いてしまうこともあります。
 その重さに対抗するためには腕や足の『付け根』である肩関節や股関節を対象に向けて動かしながら『押す』動作をすることで、より大きな力を発生させ伝えることができます(ステップ3)。
 さらに大きな力を伝えたい時には、押した後にその力の伝わっている点を支えに反対側に跳ね上がる動作を利用します。これは、垂直跳びなどの跳躍動作で、地面(床反力)を得て跳ぶ時の力の発生と同様です。それにより短時間で大きな力を発生させ伝えると同時に次の動作を起こす力としても利用し、スムーズに動作を繋いでいくことができるようになります。(最終ステップ)